この記事の要点
Q. 公表された基準地価で、うちの家の査定額も分かりますか?
A. 基準地価は基準地の土地の価格指標で、自宅の土地建物の査定額ではありません。2026年の地価調査は価格時点と公表日を分けて読み、地点の条件、建物、売却条件を順に確認します。査定では参照地点と成約事例、補正理由を尋ね、売るかどうかは材料がそろってから決められます。

大石浩之(磐田市/不動産業)です。富士ヶ丘サービス代表・宅地建物取引士として、売主側から査定の読み方を考えます。自宅の価格は、道路や建物の状態、売却条件によって変わります。公表された地価だけで、売る・売らないを決める必要はありません。
1. 2026年の地価調査は、日付と地点から読む
静岡県の「令和8年静岡県地価調査結果」は、2026年9月16日更新の資料です。全地点の価格一覧、地積や形状を確認できる県公報、場所を調べるGISが案内されています。確認日は2026年10月16日です。
まず分けたいのは、発表された日と価格を判断した時点です。国土交通省の不動産情報ライブラリでは、地価調査の価格時点を毎年7月1日と説明しています。9月に公表された資料でも、9月の自宅売却額を示すものではありません。
私は、公表された数字を持ち主の方も確かめられることを評価します。査定を受ける前に、話し合いの共通資料を持てるからです。ただし、県全体の動きを、そのまま磐田市の一軒の値上がり・値下がりに置き換える読み方には賛成できません。
資料を開くときは、磐田市の住宅地なのか、別の用途の土地なのかを先に見ます。そのうえで地点番号と場所を控えます。「磐田市の数字だった」という記憶だけでは、査定担当者と同じ土地を見ながら話せません。
2. 基準地価と不動産査定は、答える質問が違う
基準地価は、基準地という特定の土地についての価格指標です。不動産会社の査定は、依頼された土地や建物が、想定する販売条件でいくら程度で売れそうかを検討する作業です。同じ「価格」でも対象をそろえないと比較できません。
| 比べる項目 | 基準地価 | 自宅の査定 |
|---|---|---|
| 対象 | 選ばれた基準地の土地 | 依頼した自宅の土地・建物 |
| 時点 | 地価調査は7月1日 | 査定書で想定時点を確認 |
| 読み方 | 地域の価格を考える指標 | 物件条件と販売条件を踏まえた見立て |
| その後 | 自宅の成約額を保証しない | 査定額での成約を保証しない |
見落としやすいのは、基準地価の単価から、自宅の建物の値段までは出ないことです。家が建っている場所を地図で見つけても、その数字が土地と家を合わせた代金になるわけではありません。
計算の意味だけを示す仮の例です。土地の単価を1平方メートル当たり5万円、面積を200平方メートルと置くと、掛け算は1,000万円です。これは磐田市の実際の地点価格でも、自宅の査定例でもありません。建物、土地の条件差、取引時点を反映しない計算だと分かることが目的です。
私は、単価を面積に掛けた時点で「家一軒の値段が分かった」とするのは早いと考えます。数字の見た目が具体的になるほど、計算に入っていない条件も書き出しておきたいところです。
3. 自宅へ当てはめる前に、土地・建物・条件を分ける
自宅の査定を考えるときは、参照した基準地と自宅で何が違うかを整理します。国土交通省も、近隣の土地であっても形状や道路などの条件を比較し、価格時点の違いを考慮する必要があると案内しています。

土地は、地図上の近さだけで選ばない
磐田駅や豊田町駅に近いという説明だけで、土地の条件が同じとは判断できません。まず住宅地同士で比べているか。次に、面積、形、道路との接し方、周囲の利用状況を並べます。住所が近くても、車の出入りや敷地の使い方に違いがあれば、その差をどう見たか聞けます。
境界資料や道路資料が手元にないときは、「問題なし」と記入せず「未確認」と残します。分からない項目が見える査定相談のほうが、後で条件を見直す理由も追いやすくなります。準備項目は磐田・袋井で売却前に見る6つの確認事項でも整理できます。
建物は、築年だけで話を終えない
建物については、間取り図、分かる範囲の修繕履歴、雨漏りや設備不具合の情報を分けて用意します。修繕に払った金額が、そのまま売却額へ上乗せされるとは限りません。「直した場所」と「まだ確認できない場所」を伝え、査定へどう織り込んだか尋ねます。
土地として売る想定なのか、家を使う買主を探す想定なのかも確認します。解体を前提にした見立てなら、なぜその前提なのかを聞く。売却を決める前から、査定の数字に合わせて解体や大きな修繕を発注する必要はありません。
売却条件は、持ち主の希望として先に伝える
住みながら売るのか、引渡しの希望日はあるのか、家財は残っているのか。これらは基準地価の一覧では分かりません。価格だけを依頼するより、実際に守りたい条件を一枚に書いて渡すほうが、使える査定かどうか判断しやすいと私は考えます。
4. 査定書では「差が出た理由」を聞く
基準地価と査定額に差があるときは、高い・安いの印象より、比較した対象と調整の理由を確認します。基準地価に一定の倍率を掛ければ、すべての家の査定になるという説明では、自宅の条件を確認したことになりません。
私は、数字が高いことより、差の説明ができることを優先します。高い査定を喜ぶ気持ちは分かります。ただ、売主に必要なのは気分のよい数字ではなく、売出しの判断に使える根拠です。説明のない上乗せを、持ち主の利益とは呼べません。
- 参考にした基準地の地点番号と、選んだ理由は何か。
- 土地と建物をそれぞれどう見積もったか。
- 比較した事例は売出中の価格か、実際の成約価格か。
- 事例の時点と条件の違いをどう調整したか。
- どの販売期間と引渡し条件を想定したか。
私は、近くの基準地を説明の入口にするか、条件の似た成約事例から説明するかで迷います。近い地点は分かりやすい一方、近さだけが印象に残るからです。だから、どちらか一つで結論を出さず、参照した理由と自宅との差をセットで示したいと考えます。
この段落は実際の相談事例ではなく、私の判断方針です。個別の家で確認できていない道路や建物の事情まで、想像で埋めて査定の理由にはしません。
査定書を比べるなら、価格だけを縦に並べず、同じ質問への回答も並べます。住み続ける選択も含めた準備は、自宅を売ると決める前の整理から確認できます。
5. 今日できるのは、比較メモを一枚作ること
自宅の売却をまだ決めていない持ち主の方は、参照地点と未確認事項のメモから始められます。公表地価が動いたことと、ご家族にとって売る時期が来たことは、別の判断です。
- 県の結果ページから、比べたい住宅地の地点番号を控える。
- 自宅の面積・形・道路・建物で、分かることと未確認を分ける。
- 希望する引渡し時期と、避けたい負担を書く。
- 査定では、そのメモを見せて差の理由を聞く。
価格の目安と家の課題を一緒に整理したい場合は、実家カルテも確認先の一つです。相談先を選ぶときは、査定後に売却を保留したい意向も伝え、その状態で相談できるか確かめてください。
私は、今日の成果は売却の決断でなくてもよいと考えます。「何を根拠にした金額か」が一つ分かれば、家族に持ち帰る材料が増えます。基準地価は判断の入口です。売るかどうかの答えまで、数字に任せる必要はありません。
6. よくある質問
Q. 基準地価に自宅の面積を掛ければ査定額になりますか?
A. 土地価格を考える参考計算にはなりますが、自宅の査定額にはなりません。基準地と自宅では形や道路などが異なり、建物の評価も別です。参照した地点、価格時点、自宅との条件差を確認し、査定担当者に土地と建物をどう見たか説明を求めてください。
Q. 基準地価より低い査定は間違いですか?
A. 低いという理由だけで誤りとは判断できません。何の単価・総額を比較しているかをそろえ、道路、形状、建物、想定する販売条件の違いを確認します。理由が分からなければ、参照地点と成約事例を示してもらいましょう。査定額も成約額の保証ではありません。
Q. 査定を受けたあと、売却を保留してもよいですか?
A. 査定の相談と、売却を依頼する契約は分けて考えられます。依頼前に費用の有無や相談範囲を確認し、まだ売ると決めていないことを伝えてください。家族と検討して保留する余地もあります。契約を結ぶ段階では、内容と条件を読んでから判断してください。
本記事は2026年10月16日に確認した一般的な整理です。資料や取引環境は変わり、個別の査定・売却条件によって結果も異なります。税務・登記・ローン可否・補助金の適用は、金融機関・税務署・各専門家に確認を。
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この記事を書いた人
静岡県知事(2)第14083号/公益社団法人 全日本不動産協会・不動産保証協会 会員。事務所は静岡県磐田市見付5789番地1、駐車場から直接入れます。
出典・参考
- 静岡県 令和8年静岡県地価調査結果(2026年9月16日更新):https://www.pref.shizuoka.jp/machizukuri/tochiriyou/chikachousa/1085697.html(確認日 2026-10-16)
- 国土交通省 不動産情報ライブラリ 地価公示価格等の利用上の注意:https://www.reinfolib.mlit.go.jp/landPrices/about/(確認日 2026-10-16)
本記事は2026年10月16日時点の情報をもとに、一般的な考え方を説明しています。制度・金利・税の適用は個別の条件で変わります。最終的な判断は、金融機関・税務署・各専門家にご確認ください。















