この記事の要点
Q. 地籍調査が済んでいれば、家を売る前の境界確認は不要ですか?
A. 土地ごとの資料と現地の状態で必要な確認は変わります。地籍調査は境界・面積などを記録する調査ですが、市全体の進捗率だけでは自宅の状態は判断できません。地番、図面、過去の立会い記録をそろえ、道路・水路との境界も分けて調査士等に確認します。売るかどうかは、その後に決めて構いません。

磐田市で自宅や実家の売却を考え始めたとき、地籍調査が済んでいる土地なら、境界の心配はもう要らないのでしょうか。必要な確認や測量の範囲は、土地ごとの資料と現地の状態で変わります。市全体の進捗率だけで、自分の土地の確認が完了したとは判断できません。
大石浩之(磐田市/不動産業)です。宅地建物取引士・富士ヶ丘サービス代表として、売主の方が判断材料をそろえるための見方を整理します。今回は価格査定ではなく、地籍調査で分かることと、道路・水路に接する土地で別に確かめたいことに絞ります。
1. 地籍調査は土地の記録を整える調査
地籍調査は、一筆ごとの土地の所有者・地番・地目を調べ、境界と面積を測量し、地籍簿と地籍図を作る調査です。静岡県の「静岡県の地籍調査」は、このように調査の対象と成果を説明しています。県のページは2026年10月19日更新で、この記事では10月28日に内容を確認しています。
「一筆」は土地を数える単位です。家が一軒建っている敷地でも、確認したい土地が一つの地番だけとは限りません。相談するときは、普段使っている住所だけで話を進めず、手元の登記関係書類などで地番を確かめると、どの土地の資料を探すかが伝わります。
地籍調査の良い点は、土地の形や面積を、記録に基づいて話せることです。家族の記憶だけでは説明しにくい敷地でも、図面があれば、現地と照らす入口ができます。ただし、図面が手元にあることと、今回の売買に必要な確認が済んでいることは分けて扱います。
私は、資料を見つけた時点で「これで全部大丈夫です」とは言いません。どの地番を対象に、いつ作られた記録なのか。現地のどこに対応するのか。この二つが曖昧なままでは、家族にも買主にも同じ説明ができないからです。
2. 磐田市の80.8%は自宅の判定ではない
静岡県の「地籍調査市町別進捗状況」では、令和7年度までの磐田市の進捗率は80.8%です。表には調査対象面積150.66平方キロメートル、同年度までの実施面積121.80平方キロメートルが掲載されています。県ページは、この資料を令和8年4月1日時点の市町別実施状況として案内しています。
ここで意外に見落としやすいのが、80.8%は家の件数の割合ではないことです。表は調査対象の面積と実施面積を示しています。「市内の家の約8割は境界の確認が不要」という読み替えはできません。市全体の数字から、特定の地番が調査済みかどうかも分かりません。
県は、中・西部地域では農業基盤整備が水田を中心に進んだことが、調査の進捗に影響したと説明しています。磐田市の土地を考えるときも、市内を一律に扱わず、その場所の調査記録を見たいところです。周囲の土地が整然としているという見た目だけで判断しないようにします。
数字から分かることを広げすぎない
- 80.8%は、磐田市全体の地籍調査の進捗を示す数字です。
- 自宅の地番が対象かどうかは、個別の資料で確かめます。
- 現地の杭や塀が図面とどう対応するかは、別の確認事項です。
売却前に家全体の課題を整理する場合は、磐田・袋井で確認したい土地と家の項目も参照してください。今回は、その中でも境界の資料を先に整理する考え方です。
3. 道路・水路との境界は何を確認する?
磐田市の「境界の立会い」は、私有地と道路・水路との境界を、市が管理者として確認する業務を説明しています。公図を基に現地で確認しますが、国土調査や土地改良が完了した区域かどうかなどによって対応が異なるとしています。
市の説明では、事前に過去の立会い記録などを調べる必要があります。そのため、境界確定は調査士等に依頼するよう案内されています。ページの更新日は2018年8月21日で、2026年10月28日に掲載内容を確認しました。古い更新日の案内であることも含め、個別の受付や必要資料は担当窓口に確認します。
家の前の道路、敷地脇の水路、隣家との間を、すべて一つの「境界の話」として扱うと、相談先が曖昧になります。市のこの案内が説明しているのは、道路・水路との境界です。隣の私有地との境界まで、市が同じ立場で決めてくれるという意味には読みません。
| 確かめたい対象 | 相談時に伝えること |
|---|---|
| 地籍調査の記録 | 所在地と地番、手元にある地籍図などの資料名 |
| 道路・水路との境界 | 接している場所、過去の立会い書類の有無 |
| 隣の私有地との境界 | 手元の図面と現地の対応、不明な箇所 |
| 売買の段取り | 売却を決めたかどうか、希望時期と未確認事項 |
相談前に、土地家屋調査士へ「地籍調査の資料がある場合、追加で何を調べる必要がありますか」と聞く準備をします。測量の費用や期間は、土地の条件と依頼する範囲で変わります。この表だけを根拠に、測量が不要とも、すべてやり直す必要があるとも決めないでください。

4. 売ると決める前にそろえたい資料
境界について今日できる準備は、新しく測量を注文することに限りません。まず、自宅に保管している図面や立会い書類を一か所に集めます。資料名や日付が読める状態にし、対象の地番を確認します。見つからない資料は「ない」と断定せず、「手元では見つかっていない」と記録しておきます。
私は、紙を三つに分ける方法を提案します。一つ目は、地番と資料名が分かるもの。二つ目は、家族の記憶や聞き伝え。三つ目は、まだ誰にも確認していないことです。この分け方なら、覚えている話を捨てずに残しながら、確認済みの事実と混ぜずに相談できます。
例えば「以前、立会いをしたはず」という家族の話は、記録を探す手掛かりになります。ただし、それだけで今回の敷地全体について確認済みとは扱いません。立会いの対象や時期が分かる書類を探し、見つかった内容を調査士へ伝えます。これは説明のための例で、私の相談実例ではありません。
現地では、気になる場所を離れた位置から写真に残す程度から始められます。杭が見当たらない、図面の読み方が分からないときは、推測で位置を決めたり、目印を動かしたりしないでください。「どこが分からないか」が伝わる写真と資料を用意することが目的です。
実家の書類を家族で探す段階なら、実家を売る前に整理したいことを使って、誰が資料を持っているかも確認できます。価格の話と同時にすべてを決める必要はありません。資料整理の相談は、富士ヶ丘サービスの問い合わせ窓口でも受け付けています。
5. 私は「まだ決めない」ために資料を見る
売却前の境界確認は、売却を急がせるための作業ではありません。持ち続ける場合にも、家族へ説明できる資料があるかを知っておく意味があります。私は、売るかどうかの結論より先に、不明点を一つ減らすことを勧めます。今日の成果は、売却の決断でなくても構いません。
地籍調査の記録が整っているのは良いことです。そのうえで私が求めたいのは、市全体の数字だけで安心を促さず、その土地で何が確認でき、何が残っているかを説明することです。仲介会社としても、分からない点を分からないまま示すほうが、後の段取りを家族と共有できます。
私にも、どこまで資料を集めてから費用のかかる調査へ進むか、迷うところがあります。売却時期も予算も決まっていない方に、一律の準備を求めるのは違うと考えるからです。手元の書類を見て、次に必要な確認と見積もりの範囲を専門家に相談する。その順番を大切にします。
市の進捗率ではなく、自分の土地の資料から判断する。今日は地番が分かる書類を一枚探し、境界について分からないことを一行書いてください。境界・測量・登記の個別判断は、土地家屋調査士などの専門家に確認を。
6. よくある質問
Q. 地籍調査が済んでいれば測量は不要ですか?
A. 調査済みという情報だけでは、今回の売買で測量が不要かは決まりません。対象地番、資料の内容、現地との対応、売買で必要な確認範囲を整理します。手元の地籍図や過去の立会い書類を土地家屋調査士等に見てもらい、追加調査の要否と費用を確認してください。市全体の進捗率は個別判断の代わりにはなりません。
Q. 道路との境界は磐田市に相談すれば分かりますか?
A. 磐田市は道路・水路の管理者として境界確認を行うと案内しています。ただし過去の立会い記録などの調査が必要で、境界確定は調査士等へ依頼するよう説明しています。地番と手元の書類を整理して相談してください。隣の私有地との境界も同じ窓口で決まるとは限らないため、対象を分けて伝えます。
Q. まだ売ると決めていなくても確認してよいですか?
A. 手元の資料を探し、不明点を整理する段階なら、売却の決断と切り離して進められます。私は、地番・図面・過去の立会い書類を一か所に集めるところから提案します。有料の調査を依頼する前には、依頼範囲と見積もりを確認してください。売却するか、持ち続けるかを選ぶ材料を増やすことが目的です。
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この記事を書いた人
静岡県知事(2)第14083号/公益社団法人 全日本不動産協会・不動産保証協会 会員。事務所は静岡県磐田市見付5789番地1、駐車場から直接入れます。
出典・参考
- 静岡県「静岡県の地籍調査」(2026年10月19日更新):https://www.pref.shizuoka.jp/kensei/introduction/soshiki/1002123/1041030/1071809/kokudo/1027734.html(確認日 2026-10-28)
- 静岡県「地籍調査市町別進捗状況」(令和7年度まで):https://www.pref.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/027/734/r7hyou.pdf(確認日 2026-10-28)
- 磐田市「境界の立会い」(2018年8月21日更新):https://www.city.iwata.shizuoka.jp/sangyou_business/tochi_douro_kasen/1002181.html(確認日 2026-10-28)
本記事は2026年10月28日時点の情報をもとに、一般的な考え方を説明しています。制度・金利・税の適用は個別の条件で変わります。最終的な判断は、金融機関・税務署・各専門家にご確認ください。















