富士ヶ丘サービス株式会社の社長大石です。2019年の宅地建物取引士試験を合格し、2020年3月に宅地建物取引士になりました。そんな新米宅地建物取引士が、少しずつ知識をつけていく様を、【家を買うその前に】読んでいただけたらと思い、シリーズ化して記述していきます。
第1回目は「住宅性能表示制度」について、勉強をしていきたいと思います。なぜ今、勉強するのかというと、この「住宅性能表示制度」については、宅地建物取引士試験の中では出題されることはありません。だからしっかりと学習をしていない不動産関係者が多い分野なのです。もし気に入った新築建売住宅があって見学に行った場合、現地にいる案内担当者は、多分説明ができないでしょう。ならならば、新築建売住宅の現場にいる担当者の大半は、宅地建物取引士を持っていない、アルバイトさんが多いからです。その後、新築建売住宅を購入しますと申し出たあとに、登場する宅地建物取引士さんもこの「住宅性能表示制度」について語れる方は少ないはずです。ならぜらば、上記の理由で、宅地建物取引士試験で出題されたことはなく、勉強の機会はほぼないと考えられます。しかし、真面目で、探求心・研究心のある宅地建物取引士であれば、試験後も学習を続け「住宅性能評価制度」についてもしっかり説明できるようになっているはずです。
介護業界からこの不動産業界に飛び込んできた富士ヶ丘サービス株式会社の社長大石が目指す宅地建物取引士は、後者です。お恥ずかしながら、この執筆をしている時点では「住宅性能評価制度」を説明することはできません。しかしこの「住宅性能評価制度」についての執筆を終えた後は、しっかりご説明できるようになっていることがこのnote(ブログ)のゴールです。一生に一度ではない不動産購入かもしれませんが、それでも人生の中で、大きな買い物であることには変わりありません。どうか【家を買うその前に】、家の購入を検討している方の一助になれたら、幸いです。
住宅性能表示制度とは
住宅性能表示制度とは平成12年4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下「品確法」という。)」に基づく制度です。
宅地建物取引士試験では、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下「品確法」という。)」という法律の名前は聞きます。しかし、実際の法律の中身をすべて熟知しているわけではありませんし、ただ出題されたことのある過去問題を解いていたに過ぎません。お恥ずかしいことに、品確法が3本柱で構成されていることも知りませんでした。
品確法は「住宅性能表示制度」を含む、以下の3本柱で構成されています。
■新築住宅の基本構造部分の瑕疵担保責任期間を「10年間義務化」すること
実は、この一本目の柱については、宅地建物取引士試験で、「住宅瑕疵担保履行法(平成21年10月1日)」の関連で出題されるため、宅地建物取引士であれば知っていると思います。平成12年以前に合格した宅地建物取引士(その当時は、宅地建物取引主任)は知らないかもしれませんが、法定研修の中で、新たな法律を学習する機会があり、真面目な宅地建物取引士であれば、知っている内容です。要は、新築住宅の基本構造部分の瑕疵は10年間責任をもつ義務があるということです。義務を持つのは、新築住宅を建設し販売している業者ということになります。
品確法の3つ目の柱もあまり知らせていませんが、トラブルを解決するための機関があるっという程度に知っていればいいかと思います。
■トラブルを迅速に解決するための「指定住宅紛争処理機関」を整備すること
宅地建物取引士の大半が知らない「住宅性能表示制度」
宅地建物取引士の大半が知らない理由は、上記の通り、宅地建物取引士試験に出題されないからです。とはいえ、今後はより「住宅性能表示」が求められるようになれば、もっと品確法が知れわたり、しっかり「住宅性能表示」がされる新築住宅が増えていくのだろうと思います。
やっと今日の本題にたどり着きました。品確法の2つ目の柱として、「住宅性能表示制度」の制定が定めらています。
■様々な住宅の性能をわかりやすく表示する「住宅性能表示制度」を制定すること
品確法の第1条目的からキーワードを抜粋しますと、「住宅の品質確保の促進」、「住宅購入者等の利益の保護」のために「住宅の性能に関する表示基準及びこれに基づく評価の制度を設け」られた制度のようです。言い換えると、消費者が安心して良質な住宅を取得でき、住宅生産者などの共通ルールのもとでより良質な住宅供給を実現しようと導入された法律が品確法であり、2番目とはいえ、その法律の根幹をなすのが「住宅性能表示制度」と言えます。では実際に住宅性能を表す表示項目10分野を具体的にみていくことにしましょう。
以下の表示項目10分野については、一般社団法人 住宅性能評価・表示協会のホームページより、内容を引用しています。
1. 地震などに対する強さ(構造の安定)
地震などが起きた時の倒壊のしにくさや損傷の受けにくさを評価します。等級が高いほど地震などに対して強いことを意味します。等級1でも、建築基準法を満たす住宅なので、大地震が起きても倒れてしまうことはまずありませんが、性能表示制度を使うと、評価機関が建築工事を検査するので、ミスや手抜き工事の防止に役立ちます。このほかにも、強風や大雪に対する強さに関する評価もあります。
2. 火災に対する安全性(火災時の安全)
住宅の中で火事が起きたときに、安全に避難できるための、燃え広がりにくさや避難のしやすさ、隣の住宅が火事のときの延焼のしにくさなどを評価します。
3. 柱や土台などの耐久性(劣化の軽減)
年月が経っても土台や柱があまり傷まないようにするための対策がどの程度されているかを評価します。等級が高いほど柱や土台などの耐久性が高いことを意味します。木造の場合は主に土台や柱が腐らないようにするための対策、鉄筋コンクリート造の場合は主に柱や梁のコンクリートがもろくならないための対策、鉄骨造の場合は主に鉄の部分が錆びにくくする対策を評価します。
4. 配管の清掃や補修のしやすさ、更新対策(維持管理・更新への配慮)
水道管やガス管、排水管といった配管類は一般に構造躯体の修繕などを実施するよりも早く取り替える必要があります。そこで配管の点検や清掃のしやすさ、万一故障した場合の補修のしやすさなどを評価します。等級が高いほど配管の清掃や補修がしやすいことを意味します。また、共同住宅等については、排水管が寿命となった際、新しい排水管に更新する工事のしやすさや、間取り変更のしやすさの情報として、躯体の天井高等の評価、表示もします。
5. 省エネルギー対策(温熱環境・エネルギー消費量)
暖房や冷房を効率的に行うために、外皮(壁や窓など)の断熱などがどの程度されているかまた、設備(暖冷房、換気、給湯、照明)や創エネルギー(太陽光発電など)を総合的に評価します。等級が高いほど省エネルギー性に優れていることを意味します。
6. シックハウス対策・換気(空気環境)
接着剤等を使用している建材から発散するホルムアルデヒドがシックハウスの原因のひとつとされているため、接着剤を使用している建材などの使用状況を評価します。建築工事が完了した時点で、空気中のホルムアルデヒド等の化学物質の濃度などを測定することも可能です(ただし、測定はオプションです)。また、住宅の中で健康に暮らすためには適切な換気が必要なので、どのような換気設備が整えられているかについても評価します。
7. 窓の面積(光・視環境)
東西南北及び上方の5方向について、窓がどのくらいの大きさで設けられているのかを評価します。
8. 遮音対策(音環境)
主に共同住宅の場合の評価項目で、上の住戸からの音や下の住戸への音、隣の住戸への音などについて、その伝わりにくさを評価します(この評価項目はオプションです)。
9. 高齢者や障害者への配慮(高齢者等への配慮)
高齢者や障害者などが暮らしやすいよう、出入り口の段差をなくしたり、階段の勾配を緩くしたりというような配慮がどの程度されているかを評価します。
10. 防犯対策
外部開口部(ドアや窓など)について、防犯上有効な建物部品や雨戸等が設置されているかの侵入防止対策を評価します。
「住宅性能表示制度」のまとめ
長々とみてきた「住宅性能表示制度」のまとめに入っていきます。新築住宅における性能の表示項目には、上記の10分野(32項目)があります。この10分野すべての等級を最高等級にすると、多額の費用が掛かってしまい、住宅ローンの返済苦で住宅を手放さなければならなくなるかもしれません。全等級最高等級の引き換えに、住宅を手放したら、本末転倒の何ものでもありません。
また、例えば窓を広くすると地震などに対する強さの等級が低くなる可能性がある等、10分野の性能の中には、相反する関係のものもあります。
というように建設コストの観点、表示項目の相反からもすべての項目を最高等級にする必要はないでしょう。さらに最低等級である等級1は建築基準法程度の性能としているため、最低等級であったとしても、建築基準法上全く問題とならない点も頭に入れていただくとよいでしょう。
実際に家を買う場合、コンプライアンス順守が注目されて久しいこのご時世、普通の住宅メーカーや工務店は、最低限建築基準法を守った建築をしてくださっていることでしょう。しかし「住宅性能表示制度」によってその性能が表示された新築住宅には、得られるメリットが多いのです。次回のnote(ブログ)では、このメリットについて、お知らせしたいと思います。今回も長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。