ご相談のなかで、意外と多いのがこのお悩みです。「親が施設に入って、実家は空き家になった。建物と宅地だけなら売れそうな気がするけれど、隣にくっついている畑や田んぼがどうにもならない」。磐田市・袋井市のように住宅のすぐ隣に田畑が広がる土地柄では、実家を相続したご家族が「建物・宅地」と「農地」をセットで抱えてしまうケースが少なくありません。
多くの方が「農地は素人には売れない」「農業をやる人にしか渡せないのでは」と、半ばあきらめてしまっています。けれど結論から申し上げると、農地付きの実家は「売れない」わけではありません。ただ、宅地だけを売るのとは手続きの仕組みがまったく違うのです。ここを正しく理解しているかどうかで、売れるか・残ってしまうかが分かれます。
今回は、農地付き不動産がなぜ難しいのか、そして2023年の制度改正で何が変わったのかを、磐田・袋井の事情を交えて整理します。
なぜ「農地」は宅地と同じようには売れないのか
普通の宅地であれば、買主さえ見つかれば売買契約を結び、登記を移して終わりです。ところが農地には、その上に農地法という別のルールがかぶさっています。農地法は「日本の食料生産の基盤である農地を、むやみに減らさない」という目的でつくられた法律です。そのため、農地を動かすときには農業委員会という公的機関の関与が必要になります。ここが宅地との決定的な違いです。
ポイントは「権利が動くか」と「農地以外の用途に変える(転用する)か」という2つの軸で、適用される条文が変わることです。
- 農地法3条(権利移動)…農地を農地のまま、別の人に売ったり貸したりする場合。区域に関係なく農業委員会の許可が必要です。
- 農地法4条(自己転用)…所有者が自分で農地を宅地や駐車場などに変える場合。
- 農地法5条(転用+権利移動)…買主が農地を取得して、宅地などに転用する場合。
ここで混同しやすいのですが、「3条による転用」という言い方は正確ではありません。転用が関わるのは4条・5条であり、3条はあくまで「農地を農地のまま動かす」手続きです。実家の畑を「農地のまま誰かに使ってもらう」のか、「宅地などに変えて売る」のかで、進む道が分かれると考えてください。
2023年の制度改正 ― ここが大きく変わりました
農地付き不動産の売却を考えるうえで、近年もっとも重要な変化がこれです。かつて、農地を「農地のまま」買って取得するには、取得後の経営面積が一定以上でなければならないという「下限面積要件」がありました。都府県では原則50アール(5,000㎡)。つまり、ある程度まとまった面積を耕す見込みがなければ、そもそも農地を買えなかったのです。これが「小さな畑は、農業をやる人にすら売りにくい」一因になっていました。
2023年(令和5年)4月1日施行の改正農地法で、この下限面積要件は撤廃されました。 小規模でも意欲を持って農業に新たに参入する人を、地域内外から広く受け入れていこう、という政策転換です。これにより、「面積が小さすぎて農地として誰にも渡せない」という形式的なハードルは、ひとつ下がりました。実家に付いている小さな畑でも、農地として引き受けてくれる人の対象が、制度上は広がったわけです。
ただし、ここで誤解してはいけない点があります。面積要件がなくなったことは、誰でも自由に農地を買えるようになったことを意味しません。下限面積以外の許可要件(実際に耕作する意思と計画があるか、農地を適正に利用するか等)は引き続き審査されます。むしろ「面積」という形式的な物差しがなくなった分、「本当に農業をやるのか」という中身が、これまで以上に問われる傾向にあります。「制度は緩んだが、審査の本質は残っている」――ここを正しく押さえておくことが、農地付き不動産を現実的に売り進める第一歩です。
農地付きの実家を手放すときの、現実的な選択肢
では、実際にどう進めればよいのか。大きく3つの方向があります。
1. 農地を「農地のまま」誰かに使ってもらう(3条のルート)
近隣で耕作を続けている農家さんや、新たに農業を始めたい方に、農地として引き継ぐ方法です。下限面積要件が撤廃された今、小さな畑でも受け手が見つかる可能性は以前より広がっています。地域の農業委員会や農地中間管理機構(農地バンク)への相談が入口になります。
2. 農地を「宅地などに転用して」売る(4条・5条のルート)
畑や田んぼを宅地・駐車場などに変えてから、あるいは買主が転用を前提に取得して売る方法です。ただしこれは、その農地がどこにあるか(区域区分)で難易度が大きく変わります。市街化を進める区域なら届出で済むことが多い一方、市街化を抑える区域では原則として許可が必要で、転用そのものが認められないこともあります。
3. 建物・宅地と農地を一体で、出口まで設計して売る
実務でいちばん多いのが、このパターンです。「実家(建物+宅地)」「農地」「場合によっては山林や雑種地」が混在した不動産を、どの部分をどのルートで動かすか、全体で組み立てる必要があります。
磐田・袋井ならではの事情
磐田市・袋井市は、市街地のすぐ外に田畑が広がる、いわば「住まいと農地が地続き」の地域です。だからこそ、相続した実家に農地が付いてくるケースが本当に多い。地元で長く不動産に携わっていると見えてくるのは、次のような現実です。
- 区域区分で天と地ほど変わる…同じ「畑」でも、市街化区域に近いのか、調整区域なのか、農用地区域(いわゆる青地)なのかで、売りやすさがまったく違います。まずは現況と区域の確認が出発点です。
- 隣地・近隣農家との関係が鍵になる…農地を農地のまま引き継ぐ場合、いちばんの受け手候補は「隣で耕している方」であることが多い。地元のつながりが、そのまま出口につながります。
- 「畑だけ残ってしまう」リスク…建物と宅地はすんなり売れても、農地だけが手元に残り、固定資産税と管理だけが続く――これが磐田・袋井で最も避けたい結末です。最初に農地まで含めて出口を描いておくことが、結果的にいちばん家族の負担を減らします。
「介護のあとの実家」を、農地ごと一緒に整理します
富士ヶ丘サービスは、介護事業と不動産仲介の両方を手がけている、磐田・袋井の地域密着の会社です。だからこそ、「親が施設に入ったあとの実家を、農地ごとどうするか」というご相談を、最初から最後まで一つの窓口で受けられます。
- 農地が付いた実家の現況・区域区分の確認
- 「農地のまま渡す」「転用して売る」「一体で売る」のどれが現実的かの整理
- 残置物・解体・相続人間の調整・施設費用まで見据えた、家族が困らない売り方の設計
「高く売る」だけが目的ではありません。畑だけが残って親世代の負担が子世代に引き継がれる事態を防ぐことを大切にしています。
まとめ
農地付きの実家は、「売れない」のではなく「宅地とは別のルールで動く」不動産です。2023年の制度改正で、農地を引き受けられる人の裾野は広がりました。ただし手続きは複雑で、区域区分や買主の事情によって進む道がまったく変わります。
「うちの畑はどのルートなんだろう」「そもそも売れる土地なのか知りたい」。そうした、話だけ聞いてみたい段階のご相談こそ歓迎です。農地の登記簿や公図を一緒に見ながら、現実的な道筋を整理するところから始めましょう。
※本記事は2026年6月16日時点の情報をもとに作成しています。農地法の運用や下限面積(別段面積)の取り扱い、転用の可否は、各市町村の農業委員会や個別の物件状況によって異なります。具体的な手続き・税務の適用可否は、所管の農業委員会・税理士・税務署に必ずご確認ください。
参考情報(出典)
・農林水産省「農地法等の一部改正(下限面積要件の廃止/令和5年4月1日施行)」関連資料
・各市町村農業委員会による農地法第3条・第4条・第5条の手続き案内
・改正農地法に関する解説(行政書士・専門家による実務解説)
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