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相続放棄すれば実家の管理から解放される?──知っておきたい「現に占有」と2023年の民法改正
公開日:2026年6月7日/カテゴリ:相続した実家の相談窓口
1. まず基本──相続放棄とはどういう手続きか
相続放棄とは、家庭裁判所に申述して、はじめから相続人でなかったことにする手続きです。これにより、プラスの財産(預貯金・不動産など)もマイナスの財産(借金・連帯保証など)も、いっさい引き継がなくなります。実家に多額の借金がぶら下がっている、誰も使う予定がなく負担だけが残る、といった場合に検討される選択肢です。
ただし、ここで見落とされがちな点が2つあります。1つは、放棄には期限があること。もう1つは、放棄してもすぐに実家との関係が切れるとは限らないこと。とくに後者が、今回お伝えしたい改正のポイントです。
2. 2023年の民法改正で変わった「放棄後の責任」
以前の民法では、相続放棄をした人にも、次に管理する人が決まるまでは「自己の財産と同一の注意をもって管理を継続する義務」があるとされ、その範囲があいまいでした。遠くに住んでいて一度も実家に関わっていない人まで、漠然と管理責任を負いかねない条文だったのです。
そこで2023年(令和5年)4月1日施行の改正民法940条で、ルールが明確になりました。改正後の条文では、相続放棄をした人が義務を負うのは、放棄の時にその財産を「現に占有している」場合に限られます。義務の中身も「管理」から、その財産の現状を維持する「保存義務」へと整理されました。
| 改正前(〜2023年3月) | 改正後(2023年4月〜) | |
|---|---|---|
| 誰が義務を負う? | 放棄した相続人(範囲があいまい) | 放棄時に「現に占有」している人に限定 |
| 義務の内容 | 管理義務 | 自己の財産と同一の注意での保存義務 |
| いつまで | 次の管理者へ引き継ぐまで | 相続人または相続財産清算人へ引き渡すまで |
つまり、実家に住んでいた、あるいは鍵を預かって出入りしていたなど、その建物を現に占有していた人は、放棄しても「引き渡すまで」は最低限の保存(傷まないように見ておく)の責任が残ります。一方、まったく占有していなかった遠方のご親族などは、改正後は保存義務を負わないと整理されました。
3. 全員が相続放棄したら、実家はどうなるのか
では、相続人全員が放棄して、引き継ぐ人がいなくなった実家はどうなるのでしょうか。この場合、自動的に国のものになるわけではありません。利害関係人(債権者など)や検察官の申立てによって、家庭裁判所が相続財産清算人を選任し、その人が財産を清算していく流れになります。
この「相続財産清算人」も、実は2023年4月の改正で整理された名称です。改正前は「相続財産管理人」と呼ばれていましたが、清算手続きの合理化とあわせて名称が変わり、権利関係を確定するための公告期間も短縮されました(従来は最低約10か月かかっていたものが、最低6か月程度に)。
なお、「いらない土地を国に引き取ってもらう」制度として、2023年4月27日に始まった相続土地国庫帰属制度もあります。ただしこちらは建物が建っている土地は対象外で、原則として更地にする必要があり、承認されても10年分の負担金(原則20万円~/筆)の納付が求められます。空き家の建つ実家をそのまま国に渡せる制度ではない点に注意が必要です。
4. 放棄を決める前に確認したい4つのこと
相続放棄は強力な手段ですが、いったん使うと後戻りできません。決断の前に、次の4点を整理しておくことをおすすめします。
(1) 本当にマイナスの相続か
借金があるからと急いで放棄を決める前に、実家の不動産にどれくらいの価値があるかを確認しましょう。立地によっては、売却すれば借金を返してなお手元に残る、というケースもあります。磐田の地域相場をふまえて、まず資産と負債の全体像を整理することが先決です。
(2) 熟慮期間(3か月)の管理
放棄するにせよしないにせよ、判断には期限があります。財産調査が間に合わないときは、家庭裁判所に「熟慮期間の伸長」を申し立てることもできます。何もしないまま3か月が過ぎると、原則として相続を承認したものと扱われる点に注意が必要です。
(3) 次の順位の相続人への影響
自分が放棄すると、相続権は次の順位の人(兄弟姉妹や甥姪など)に移ります。自分だけ放棄して安心していたら、知らせを受けていない親族が思わぬ負担を抱える、ということも起こり得ます。放棄を考えるときは、関係するご家族と情報を共有しておくと安心です。
(4) 放棄以外の選択肢
「負担だから手放したい」という気持ちの裏には、放棄しなくても解決できることが少なくありません。古家付き土地として売る、リフォームして貸す、買取を利用する──こうした方法なら、価値を現金に換えながら実家を手放せます。放棄は最後の手段と考え、まず活用・売却の余地を確かめることをおすすめします。
まとめ
相続放棄は、不要な財産や借金を引き継がないための大切な手段ですが、「放棄すれば実家のことはすべて終わり」とは限りません。2023年4月施行の改正民法940条により、放棄後に保存義務を負うのは「現に占有していた人」に限定され、その人は引き渡しまで最低限の責任を負います。全員が放棄しても、相続財産清算人の選任や予納金といった手間・費用が残る場合があります。そして放棄は撤回できず、3か月の期限もあります。だからこそ、放棄を決める前に「この実家は本当に負担なのか、それとも活かせる資産なのか」を冷静に整理することが大切です。磐田市・袋井市・浜松市で相続した実家にお悩みの方は、判断の前に、まず現状の整理からお気軽にご相談ください。
参考情報(2026年6月時点)
- 法務省「民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)の概要」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html
- e-Gov法令検索「民法(第915条・第940条・第952条)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_25/index.html
- 裁判所「相続財産清算人の選任」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_15/index.html
- 法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html
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本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、税務・法務上の最終判断は専門家へご確認ください。記載の制度・数値は公開時点の情報です。















