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相続した実家、「売る」前に「貸す」という選択肢──賃貸活用のリフォーム判断と収支の考え方
公開日:2026年6月8日/カテゴリ:相続した実家の相談窓口
1. 「売る」と「放置」の間にある「貸す」という道
相続した実家を空き家のまま放置すると、固定資産税の負担は続き、建物は人が住まないほど傷んでいきます。総務省の調査では、2024年(令和6年)の全国の空き家は約900万戸と過去最多に達しました。国も空き家の活用を後押ししており、その有力な選択肢のひとつが「貸す」ことです。
「貸す」を選ぶ意味は、単に家賃収入を得ることだけではありません。人が住むことで家が傷みにくくなり、換気や通水・庭の手入れといった管理の手間からも解放されます。売ってしまえば実家は手元に残りませんが、貸すなら所有権は持ったまま。「将来やっぱり子や孫が使うかもしれない」「すぐに手放す決心がつかない」というご家庭にとって、貸すことは“答えを先送りにしながら維持する”現実的な方法になり得ます。
| 選択肢 | 主なメリット | 主な負担・注意点 |
|---|---|---|
| 売る | まとまった現金、管理から完全に解放 | 家は手元に残らない、譲渡所得税の検討 |
| 貸す | 所有権を保持、家賃収入、家が傷みにくい | 初期のリフォーム費用、貸主としての責任 |
| 放置 | 当面は何もしなくてよい | 税負担が続く、老朽化・近隣トラブル・資産価値の低下 |
2. 貸せる実家・貸しにくい実家──まず見極める
「貸す」を検討するとき、最初に確かめたいのは“その家に住みたい人がいるか”です。どんなにきれいにしても、賃貸需要のない場所では借り手が見つかりにくく、リフォーム費用だけが先に出ていきかねません。次のような点が、貸しやすさを左右します。
立地・周辺環境
駅やバス停、スーパー、学校、病院との距離。車社会の磐田周辺では、駐車スペースの有無も大きな判断材料になります。職場や学校が近いエリアなら、戸建てを家族世帯に貸せる可能性があります。
建物の状態
雨漏り・シロアリ・基礎のひび・傾きといった構造に関わる傷みは、修繕に大きな費用がかかり、貸すハードルが上がります。一方、内装や設備の古さだけなら、工夫しだいで貸せる状態に持っていけることが多いものです。判断に迷うときは、インスペクション(住宅診断、費用の目安は5〜10万円程度)で建物の健康状態を確かめておくと、その後の判断がぐっとしやすくなります。
権利関係が整理されているか
意外と見落とされがちなのが名義です。相続した実家を貸す前提として、相続登記を済ませて名義を相続人に変えておく必要があります。2024年(令和6年)4月から相続登記は義務化され、不動産の取得を知った日から原則3年以内の登記が求められます(正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象)。共有名義のまま貸すと、賃貸借契約や修繕の判断で共有者全員の足並みをそろえる必要が出てきます。貸す・売るいずれにせよ、まず名義の整理が出発点です。
3. リフォームはどこまで必要か──費用相場と「DIY型賃貸借」
貸すとなると「全部きれいにしないと」と気負ってしまいがちですが、賃貸では“どこまで直すか”の見極めが肝心です。かけた費用は家賃で何年もかけて回収することになるため、過剰なリフォームはかえって採算を悪くします。費用の目安はおおむね次のとおりです。
| 工事の範囲 | 費用の目安(戸建て) |
|---|---|
| 浴室・キッチンなど水回りの交換 | 1か所あたり150〜200万円程度 |
| 内装中心のリノベーション | 500〜2,000万円程度 |
| 骨組みだけ残すスケルトン改修 | 1,000〜2,500万円程度 |
幅が大きいのは、家の状態や仕様で費用が大きく変わるためです。大切なのは「全部直す」ではなく、雨漏りや水回りなど“住むのに支障が出る部分”を優先し、見た目の古さは最低限にとどめるという発想。和室を残す、設備は同等品に替えるなど、割り切ることで費用は大きく抑えられます。
そこで近年注目されているのが、国土交通省も推進する「DIY型賃貸借」です。これは、借主が自分の費用と好みで改修できることを認める賃貸借契約のこと。貸主にとっては、傷んだ部分を直さず現状のまま貸せるため初期費用を抑えられ、借主が手を入れることで愛着がわき長期入居が期待できる、という利点があります。借主にとっても相場より安く借りられ、自分好みに住めるメリットがあります。国交省は契約書式例とガイドブック「DIY型賃貸借のすすめ」を公表しており、トラブルを防ぐうえで、改修範囲や原状回復義務の取り決めを契約で明確にしておくことが大切です。
4. 貸すときに知っておきたい制度と税金
改正「住宅セーフティネット法」で広がる借り手
高齢の単身者や子育て世帯など、これまで賃貸住宅を借りにくかった方々の入居を後押しするため、2025年(令和7年)10月1日に改正住宅セーフティネット法が施行されました。安否確認などの見守りが付いた「居住サポート住宅」の創設、国が認定する家賃債務保証業者の制度、入居者が亡くなった際の残置物処理を円滑にする仕組みなどが整えられ、大家側のリスクや不安が軽くなる方向に動いています。借り手の幅が広がることは、実家を貸したい所有者にとっても追い風です。
税金の扱い
建物に人が住む(賃貸する)と、その土地は「住宅用地の特例」により固定資産税の課税標準が軽減された状態が続きます。空き家を放置して「特定空家」「管理不全空家」に指定され勧告を受けると、この特例が外れて固定資産税が大きく上がるおそれがあるため、貸して住んでもらうことは税負担の面でも合理的です。一方、得た家賃は不動産所得として確定申告が必要で、固定資産税・修繕費・減価償却費などは経費に計上できます。賃貸を始める前に、収支と税のイメージをつかんでおくと安心です。
5. 収支の考え方──「もうけ」より「負担を減らす」発想
相続した実家の賃貸を考えるとき、大きな利益を狙う投資物件と同じ物差しで測ると、判断を誤りやすくなります。築年数の経った戸建てでは、まず「持ち続ける負担をどこまで減らせるか」という視点で考えるのが現実的です。
たとえば、空き家のままなら毎年の固定資産税・火災保険・草刈りや見回りの費用がただ出ていくだけです。これが、月数万円でも家賃が入れば、税や保険の負担を相殺し、家も傷みにくくなります。「大きくもうける」のではなく「持ち出しを止め、家を生かす」。この発想で、リフォーム費用は家賃で何年で回収できるかを試算し、回収に無理がない範囲に工事を抑えるのがコツです。借り手がなかなか見つからない立地なら、無理に貸そうとせず、古家付き土地としての売却や買取に切り替える判断も大切になります。
まとめ
相続した実家は、「売る」か「放置する」かの二択ではありません。所有権を残したまま家を生かせる「貸す」という第三の道があります。貸すかどうかは、立地の賃貸需要・建物の状態・名義(相続登記)の整理が出発点。リフォームは“全部直す”のではなく住むのに支障が出る部分を優先し、初期費用を抑えたいなら国も推す「DIY型賃貸借」も選択肢になります。2025年10月の改正住宅セーフティネット法で借り手の幅は広がり、住宅用地特例の維持という税のメリットもあります。大切なのは「もうける」より「負担を減らし家を生かす」発想です。磐田市・袋井市・浜松市で相続した実家にお悩みの方は、貸すか売るかを決める前に、まず現状の整理からお気軽にご相談ください。
参考情報(2026年6月時点)
- 国土交通省「DIY型賃貸借に関する契約書式例とガイドブックについて」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000046.html
- 政府広報オンライン「改正『住宅セーフティネット法』がスタート(令和7年10月1日施行)」 https://www.gov-online.go.jp/article/202511/entry-9947.html
- 国土交通省 住宅局「住宅セーフティネット法等の一部を改正する法律について」 https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001300275.pdf
- 法務省「相続登記の申請義務化について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
- 総務省統計局「住宅・土地統計調査(空き家数)」 https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/
相続した実家のこと、まず整理しませんか
貸すべきか、売るべきか、それとも別の方法か。賃貸需要や家賃の見立て、必要なリフォームの範囲、古家付き土地としての売却・買取の見立てまで。磐田市見付を拠点に、袋井市・浜松市の皆さまにも寄り添う地域密着の不動産会社です。相談は無料です。
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本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、税務・法務上の最終判断は専門家へご確認ください。記載の制度・数値は公開時点の情報です。















